#04 獅子神敬一は後輩になりたい
─1─
「ほ、ほんとに教室だ……」
ナマエは興味深げにきょろきょろと内装を観察している。ふつうの宿泊用ホテルはともかく、ラブホテルを利用するのは初めてだったから、ナマエが緊張していないようで良かった。
コンセプトルームを目玉にしているラブホテルを選んだのは、以前ナマエにおねだりした「制服プレイ」をするためだった。
オレが通販しまくった衣装や小道具をスーツケースに詰めてきたので、傍目には旅行客あるいは個撮目的のカップルにでも見えたことだろう。
本日の目的はもちろん制服プレイなので、オレが選んだのは学校の教室を模した部屋だった。ワンルームの部屋がパーテーションで区切られていて、片方が教室エリア。木目の床に黒板、教壇、ロッカー、生徒用机が並んでいる。もう片方は保健室エリアで、シンプルなパイプベッドとカーテン、保健医のデスク、聴診器等の小道具も置いてある。
「見回りは終わりましたか、センパイ?」
戯けて問うたオレの言葉に、ナマエは気まずそうに振り返った。
「あの、やっぱり着て、するんですか?」
嫌ならもちろんやめるが、と前置きしてから、そのちいさい手を引いて口づける。
「オレは、したい」
思った通り、小さく頷いた。嫌と言えるようになったとは言え、ナマエはオレのおねだりにとても弱いのだ。こうすればナマエは断れない。許してくれる。駆け引きとも言えない、狡い策略だ。
「シャワー別々で浴びるか? お互い着替えてから顔合わせしよーぜ」
「は、はい……あの、わたし、どんな風にしたらいいか、分からないんですけど……」
「あー、先輩後輩って設定だけにしとくか。オレに敬語は使わねえのと、下の名前で呼んでくれたら問題ねぇ」
「えぇ……」
「もし間違えたら罰ゲームな」
ナマエは不安そうにコクコクと頷いた。
まずはオレが先にシャワーを浴びて、奥の保健室エリアで着替えることにした。男用のコスプレ衣装は数が少ない上に、オレのサイズに合うものがなかなかなかった。安っぽいつるつるな学ランに袖を通し、パイプベッドに寝転んでナマエを待つ。
思ったより、衣装もセットもチープだが、ナマエはちゃんと楽しめるだろうか。オレとしては、制服姿のあいつを拝めるだけで万々歳だが……。
//////////耳を澄ませると、シャワー室から出てきたナマエの足音や衣擦れの音が聞こえてくる。期待が高まりすぎて破裂しそうだ。
「敬一くん」
しばらくしてから、パーテーションの向こうから声がした。
「着替え、たよ」
慣れねえタメ口の棒演技が逆にそそる。どんな顔をして待っているのだろうと、オレはカーテンを開けて教室側を覗いた。
真っ先に目に入ってきたのは、スカートの安っぽい青。てらてらした赤いスカーフ。そしておさげ結びをして俯くナマエの表情だった。
ネットで買ったセーラー服は、ペラペラの生地に雑な縫製で、本当に形だけの安っぽいものだった。きっと当時のナマエは、お淑やかに膝丈のスカートを身に纏っていただろう。それがしゃがみ込むだけでパンチラしそうな短さしかない。だが、この安っぽさと似つかわしくない露出が、逆に〝着させている〟感があって──正直興奮した。
対面しているオレの方も、一番でかいサイズの学ランがパツパツしていて息苦しいほどだ。中のシャツだけは自前のを着てみたが、やはりちぐはぐしている。それでも見上げてくる視線は熱っぽくて(ああ、こいつもドキドキしてんだな)と実感した。
「──て、オイ」
オレは思わず唾を飲んだ。
背中側に手を回してもじもじしているナマエは、下着をつけていなかった。薄い生地の下に、乳首の影がはっきりと浮き出ている。
「あ、あのね。そ、その、きょう、プールの授業があって。し、下に水着を着て来たんだけど……下着、持ってくるの……忘れて……」
よすぎ。
天才。
えっろ。
自分でそのシチュ考えてきたのか? あのナマエが? オレは早足で距離を詰めてナマエの目の前に立った。机を背に立つ小さな身体を閉じ込めるように、両手を天板に置く。
「け、けーいちくん?」
「見せ──てください」
「や、やだ……だめ」
囁くような「だめ」の声に、ペニスがぎんと勃ち上がるのを感じた。
コスプレ用の衣装だからか、スカートの丈は短く、白く柔らかい太ももが刺激的に晒されている。
小道具のシャーペンのノック部分を内腿にあて、すぅーっと上に滑らせる。スカートの裾を持ち上げようとしたとき、ナマエの手が抑えた。
「ほ、ほんとに穿いてないから……っ」
「ノーパンならマン汁でスカート汚れちまうんじゃないっすか?」
「まっ……!?」
わざと下品な言葉を使うと、予想通り大きく動揺した。聖人君子で王子様な〝獅子神さん〟がそういう言葉遣いをすると分かりやすくパニクってしまうのだ。
つーか、後輩の敬語ってもう少し砕けてていいよな。慇懃すぎると逆に仰々しいというか。
「センパイ、見せて」
「うぅ……」
ナマエは両手でスカートの端をゆっくりと持ち上げた。言うことを聞かせているという支配感。だめだ、全然後輩らしくできねえな。
目に痛いくらい鮮やかな青いプリーツの下に、真っ白な肌が覗く。ヴァギナから溢れる透明な蜜は、太腿を伝っていまにも靴下に到達しそうだった。その水滴に思わず口をつけたくなる。
陰毛に隠れたクリトリスをシャーペンの尻で突くと、もたれてる机ががたんと音を立てるほどに身体を跳ねさせた。危ねえ。たとえノック側だとしても、こんなのをナマエの大事なところに入れるわけにはいかない。
「ノーパンで授業受けたんすか?」
「し、してないっ、保健室で休んでたからっ、あっ♡ も、擦っちゃ、やっ」
すりすりと陰核を擦ると、ナマエはスカートを持ち上げたまま腰を揺らした。こんな後輩にいいようにされていいのか?
ちゃちな木目の床に、ぱたぱたと水滴が落ちる。だんだんと手が下がってくるのを指摘して、また持ち上げさせる。律儀すぎるほどにオレの指示に従うのが愛おしくてゾクゾクした。
「あーあ。センパイと同じクラスなら水着も見れたのに」
「……水着もあり、あるよ?」
確かにスク水も買っちまったし持ってきたけど。
そういうことじゃねえ。オレは少しムカついてスカートの中に顔を突っ込んだ。散々いじって膨らんだクリトリスにしゃぶりつくと、ひゃあんと声をあげて腰を抜かした。おかげですっかり濡れた蜜壺が、待ち構えていた指にぬちゅんと落ちてきた。
「やっ、だめっ、ゆびっ、そこだめだからぁっ」
「止めらんねぇな、ガキだから」
これ幸いと指の角度を調節して内外から責めることにする。
「あっ♡ しゃべっ、ふぁっ♡ うぅ、なかっ、あっ、あっ、あ〰︎〰︎〰︎〰︎♡♡♡♡」
以前は本気で嫌がったクンニも、いまでは形だけの抵抗を示すだけだ。
クリトリスを表と膣内から舌と指で刺激すると、腰がガクガクと揺れ、ぷしゅと潮をふいた。量は大したことはないが、鼻から顎にかけて濡れてしまったので手のひらでぬぐった。さらっとしていて少ししょっぱい。
ナマエは目をぱたぱたと瞬かせたあと、紅潮した頬を一気に青ざめさせる。
「し、しがみさっ、あっ、ご、ごめんなさい! あの、わたし」
セーラー服のスカーフを抜き取って、汚れたオレの顔を拭う。泣きそうな顔でごめんなさいごめんなさいと謝るナマエに、もう我慢なんてできるわけがなかった。
「違ぇだろ?」
発した声は、自分でも思っていたより低くて大きかった。ナマエを机の上に持ち上げて押し倒すと、怯えたように身を竦ませた。
「〝獅子神さん〟じゃねえだろ?」
「──け、いいち、くん」
掠れた声が震えてる。ああ、違うんだよ。怒ってねぇんだ。全然。興奮を押さえつけようとしたらこうなっちまったんだよ。後で謝るから、後で許してくれ。いまはそれどころじゃない。
着慣れねえ学ランのズボンからペニスを引き摺り出す。早く暴れたくて仕方ねえ息子にスキンを被せる。慣れた動作ももどかしいくらい、ぶち込みたくてたまらねえ。噛みちぎった包装をぺっと吐き捨てると、すぐさまヴァギナに突っ込んだ。
「あ゙──♡」
身構えてなかったのか、一拍遅れて中がきゅうっと締まる。その収縮が気持ち良過ぎて出しそうになるのを必死に耐えた。
「挿れただけでイッた?」
「ひが、ちがぁ」
「センパイ、処女じゃねぇの?」
「うっ、んぁ♡」
「オレがはじめてじゃねぇの?」
「ふっ──あぁっ♡」
「答えろよ」
「あっ♡ あっ♡ はぅっ♡ は、はじめてっ♡♡♡♡ け、けぇいちくんがぁ♡ はじめ、あ゙ん♡♡」
小さい身体に覆い被さりながら、がんがんと腰を振る。脚の高さが合っていないのか、机がガタガタと大きな音を立てた。中に入っていたらしい教科書が床にばさりと落ちる。保健体育、と書かれた表紙を見て笑っちまう。
がたがたがた
ぢゅぷっ ぢゅぷっ ぢゅぷっ
机がガタつく音がうるさくて、自然と声も大きくなっていく。
「オレが初めてなんだ。な?」
「んっ♡ ぅん、あッ♡」
「センパイ」
「あっ♡ あっ♡ けいいちく、ぁんっ♡♡♡♡」
「オレと付き合って」
「ひぁっ、あっ♡ あっ♡ あっ♡」
「オレの彼女になって」
「ああっ、なるっ、なるからっ♡ け、いちくんのっ♡ かのじょになるっ♡♡♡♡」
大満足の回答を言わせながらほぼ同時に絶頂した。ずるう、とペニスを引き抜くと、中出しでもしたかと思うほどに愛液が漏れてくる。スキンを引き抜くと、オレもいつもより出ているような気さえする。イメプの効果ハンパねえな。
床にへたり込むナマエが弱り切って、小さくはあはあと息を吐くのがめちゃくちゃに愛おしいくてえろい。見た目では服も上下着てるってとこが更にえろい。生地がぺらぺらなせいか、汗ばんだ肌に張り付いている。なるほど、作りはちゃちでも構わない──むしろ、いい。
「けぇ、いち、くん……こんな、せんせぇ、きちゃうよぉ……」
ペニスが痛ぇほど元気になる。
まだ喘いでいるようなぜいぜいの声に、オレの下半身がさらに元気になる。無自覚で言ってんのがすげぇんだよな、こいつ。
「じゃ、保健室行こうな」
歩数にしてたった三歩で保健室エリアのベッドに り着く。ベッドの白いパイプ柵にスカーフを通して、ナマエの両腕を縛った。真っ赤なスカーフが実に映える。
「センパイ、少しは抵抗してくれよ」
「……だって、敬一くんだもん」
あーーーーかわいい。抱く。抱き潰す。
おっといけねえ。ことナマエに及んでは、理性メーターがすぐバカになる。せっかくだからもっと楽しまねえと、とオレは何度も自分に言い聞かせる。
オレは教室スペースに戻って、机に置いておいたシャーペンを手に取った。最初は何も分かってないようだったナマエも、それを胸に突きつけられてようやく理解したようだった。
「まっ──」
薄っぺらいコスプレ衣装の上から、すりすりと乳首を刺激する。
「はひゃっ」
「変な声」
「け、いちくんがっ♡ へんなことするからっ」
「自分から擦り付けてんだろ」
「んーっ♡」
手を拘束されたナマエは、胸を突き出すように背中を反らしていた。自分から迎えに行ってるんだぞ、と伝えるために、身体とシーツの間に手を滑り込ませて背筋をなぞると「あぁっ♡」と甘い声をあげて軽くイッてしまう。
「けーいちくん」
刺激を続けようとすると、申し訳なさそうな声でナマエがオレを呼ぶ。下ろした腕には、パイプから解けたスカーフが緩く巻きついていた。ナマエは手首を揃えてオレに示して、「ほ、解けちゃった……」と困った声を出した。
縛り直して、と言っている。
両手を差し出して自分から拘束をねだっている。
おいおいいいのかよ、と思ってしまう。そんなに当然みたいにオレを信じ切って。どろっとした黒い欲望が心のなかに渦巻く。ひとを疑わない、この無垢な女に知らしめてやりたい。オレがどれだけ危険で、お前を犯し尽くしたいと思っているか。
あまりに細くてか弱そうな腕を前に、ぎちぎちには縛れなかったが、今度はしっかりと固結びでパイプに縛りつける。その間もナマエは大人しく待っている。目の前の男が、どれだけ性欲を爆発させているのか知りもせず。
「痛くないっすか?」
「だいじょ──んんっ!?♡♡♡」
返事が終わる前に、オレはセーラー服越しに乳首をつまんだ。硬く存在感を示す乳頭をすりすりと擦ると、嬌声をあげて腰を揺らし始める。
「センパイ、本当に処女なんすか? なんでこんなにエロいんすか?」
「ひぅ♡♡♡♡ えっちじゃなっ♡♡♡♡」
とろっとろになった蜜壺に指を二本挿入する。先ほど中からも刺激したせいか、柔らかい膣道はずぷずぷと指を飲み込んでいく。
「乳首もまんこもエロくてかわいーっすね」
「ちが、ぁう♡」
オレがベッドに乗ると、ぎいっと大きく軋みをあげた。ナマエの片足をオレの肩に載せる。ふくらはぎに頬を擦り付けてちゅっちゅっとキスをした。恥ずかしがって顔を隠そうとするも、腕を縛られているから隠せないでいる。キスをしながらその顔を流し見ると、ぴくんと身体を震わせた。夢見がちなこいつは、オレの王子様っぽいムーブが大好きなのだ。そしてオレは、そんな夢をぶち壊したい。
ペニスをぢゅぷりと突っ込んだあと、わざとらしく身を屈めて囁いた。
「あー、センパイのまんこあったけぇ」
「ふっ、うぅ……んぅーーーーっ♡♡♡♡」
顔を真っ赤にして涙目になりながら絶頂している。とろとろに蕩けた表情がオレのペニスを一層固くした。開きっぱなしの口からは嬌声と一緒に唾液が垂れて、だらしなく舌を出している。
その舌を吸うようにキスをすると、一生懸命に舌で応えながら、なかをきゅうきゅうと締め付ける。
ぎいっ、ぎいっ、ぎいっ
はあっ♡ はっ♡ はっ♡ はーっ♡
ぢゅっ、ぬぷっ、ぢゅぷっ
パイプベッドの軋む音。ナマエの喘ぎ声が混ざった吐息。生々しい水音が部屋に響く。
言葉を紡ぐ余裕がないくらい、互いに互いを貪り食うような交わりだった。
スキンを取り変えるついでに、オレはスーツケースからローターを取り出した。女向けのプレジャーグッズとして流通していて、ペールカラーで丸っぽい見た目は、一般的なアダルトグッズに見えない。このタイプを選んだのは、いかにもなどぎついピンクのディルドやローターだと、ナマエが怖がるかもしれないからだ。
「え、なに?」
まだ気づいていないナマエの腹にローターを押し当てて電源をオンにする。ぶぶぶぶぶ、と微弱に震え始めた。
「んぅ!?」
臍の横から下になぞるようにローターを動かす。卵巣や子宮があるあたりを滑らせ、足の付け根、大陰唇を順に刺激していく。
「なにっ!? あっ、やだっ、やだやだっ」
「ぶるぶるして気持ちいい?」
「やらっ、あっあっあっ、わかんないわかんないっ」
ナマエは大きく身を捩って身体を丸めた。腕を無理矢理引こうとして柵ががたがたと音を立てる。
「センパイ、じっとしてないと手が痛いですよ」
「あっ♡ あっ♡ やらやらっ、はなしてっ」
こうなったのは、縛り直させたナマエにも責任の一端がある。ナマエはあうあうとずっと嬌声をあげている。時折りオレを呼んでは助けを求めてくる。
「あんっ♡ あ゙〰︎〰︎〰︎〰︎あ゙っ♡♡♡♡ やらっ♡ たしゅっ♡ ししがっ♡」
クリに直接当てたときには、股を開いて腰を突き上げて、最高に下品な格好で絶頂した。
ぷしゃあ、とイキ潮を盛大に噴いてオレの手を濡らす。ここまで強い快感は初めての経験なのだろう。しばらくはぴくぴくと捌きたての魚のように痙攣していた。
やがて放心状態が解けると、できる限り身を捩ってオレに背を向けた。
「やら、きらい、きらいっ、もうやだ…っ」
ぐすぐすと泣くナマエの拘束を解くと、シーツの上で身を丸める。
「けぇいちくんなんかっ、きらいっ」
真っ赤な涙目で睨まれても全然怖くもなんともないが、嫌いと何度も口に出されると流石に慌てる。
「わ、わりい。調子に乗った」
「きらい。やだ。もうしない」
抱きしめた枕に顔を埋めて、完全に怒っている。
「すまん」
「……先輩への謝り方じゃない」
「申し訳ありませんでした。この通り」
オレは正座してベッドの上に手をつき、深く頭を下げた。額をシーツに擦り付ける。散々奴隷を土下座させていたオレが、まさかこんなふざけた格好で土下座するなんて想像もしていなかった。
無言で無視していたナマエも、オレが頭を下げ続けているのに気づいて口を開いてくれた。
「そういうの、学校に持ってくるの、だめでしょ」
まだ先輩プレイを続けてくれている。ありがてえ。オレは頭を下げたまま「すみません」と謝った。
「わた、わたしが没収しま、するからね」
言ってオレの手からローターを取り上げると、ベッドの脇に避けてバフっと枕で封印した。そして恨みをぶつけるようにバンバンと手のひらで枕越しに攻撃する。よほどあの刺激が衝撃的だったらしい。その子どものようなやつあたりに、思わず笑みが溢れそうになる。
「がっ、学校に関係ないものは禁止っ! わかった!?」
「はい」
「反省して、してる?」
「はい」
「せ、先輩としてっ、ば、ばばばば罰を与えるのでっ、そこに立ってください!」
「はい」
慣れてねー。
叱り慣れてなさがすごい。もしかして、学校の「起立」「礼」「着席」以外に、誰かに命令したことがないんじゃないか?
オレは笑ってしまわないように唇を噛みながら、示されたベッド脇に立つ。その際、膝まで下ろしていたズボンとボクサーパンツを穿き直そうとしたのだが、センパイに止められてしまった。半勃ち状態をぶら下げたまま立っておけというのは、まあまあの罰かもしれない。
ナマエは「うう」とか「ああ」とか困った声を出しながら、オレの前に立つ。ここまで来るとナマエのいう罰──えっちなおしおきが何なのかは明白だ。
オレに困らされた分を反撃しようとして、さらに困っている。慣れないイメプに加えて、初めてのフェラチオまでしてくれるとか。役得と言わずになんと言おう。
「う、動いちゃだめだからね」
「はいはい」
「敬一くんから触るのもだめだからね」
「はいはい」
「び、びっくりしないでね」
「わかってるって」
時間稼ぎのような念押しに、思わず普通に返答してしまう。
何度も口を開いては躊躇って閉じて、を繰り返している。そんな光景を目の前にしたら、半勃ちだったペニスが元気になってしまうのも無理からぬ話だ。
「お、おっきくしないで!」
「いや、それは無理だろ」
セックスのときも風呂に入るときも目を逸らしているから、男のイチモツを間近でちゃんと見るのは初めてなのだろう。いつまで経っても食いついてこず、可愛い顔で百面相をしている。
その初々しい反応に、つい嗜虐心が顔を覗かせてしまう。
「せーんぱい♡ 舐めてくれるんじゃないんすか?」
「っ……」
ペニスで頬をぺちぺちと叩く。完全に悪ノリだ。先走ったカウパーが、赤みがかった頬についてぬちゃりと銀の橋をかける。
この状況だけで達しそうなくらいだ。すげー興奮する。
顔を背けつつも視線はちらちらと送っている。それに気づかれているとは思っていないこの無自覚さ。無防備さ。壊したくなる。
「……ほんとにおっきい」
ため息のような声が下半身に響く。すり、と手を添えて頬擦りをしやがった。思わず腰を動かしそうになる。
他人よりでけぇ自覚はあるが、ナマエの小さい顔に比べると凶悪さが増している。白くて滑らかな肌に対して、びきびきと血管が主張する赤黒い皮膚。繊細な指がさらに細く見えるくらい、太く反り上がった肉棒。オレですらそう思うのだから、ナマエにとっては凶器そのものだろう。
「やっと分かったんすか? いっつもコレぶち込まれてんのに?」
「……いつもじゃないでしょ、……きょ、きょうが〝はじめて〟だから……」
思わず笑い声が出た。そうだった。そういう設定になったんだった。
「か、彼女で先輩、だから、ちゃんとするから……」
「オレ、待ちきれないんすけど」
「んっ」
意を決したように亀頭に口を被せる。歯を当てないようにしているようだが、それでも口内は狭くてぶつかってしまう。
「……べろで先っぽ舐めて、ッ、そう……」
こんな下手くそなフェラは初めてなのに、熱くて柔らかい舌で触れられるだけでイキそうになる。
「くち、窄められるか? 全部は、いいからっ……」
口蓋の凸凹に先っぽが擦れてきもちいい。三分の一も咥えられていないのに、ねとつく唾液が熱くてちんこが溶けそうだ。
溢れる唾液を飲み込もうとしたのか、ぢゅうっと亀頭を吸われた刺激で吐精した。
「っ!? っ、げほっ」
「わり、大丈夫か?」
そばにあったボックスティッシュを差し出した。何度か咳をしてえずく姿に罪悪感を覚えていると、「きもひ、よかったでふか」と辿々しい言葉で問われた。なんだよ、その褒めてほしそうな顔は。
「……めちゃめちゃ良かった」
「ふふ」
「ほら、吐き出せって。ぺって」
ずっと口を手で覆っているナマエに、ティッシュを差し出すと、れろ、と白濁した粘液を少しだけ吐いた。その姿も、出したベロも、途切れずに垂れる透明な唾液も、ぜんぶがエロくてその顔に食らいつきたくなっちまう。
「ぜんぶ飲めなくてごめんなさ──ごめんね」
「いんだよ、そういうの。……ちゅーしていい?」
ん、と頷くナマエをベッドに持ち上げて、互いの淫部を舐め合った唇を重ねる。そういえば、ラブホに着いて初めてのキスだということに同じタイミングで気がついたらしい。
「初めてのちゅーだね?」
「……順番間違えたな。しかも全然罰じゃねーし」
「あっ」
「ご褒美ありがとうございました?」
ナマエは不服そうな顔で「どういたしまして」と答えた。
何度か触れるだけのキスをする。お互い、この方が相応しいと思ったのだ。
「えっと、も、もう一回、挑戦してみて、いいかな…?」
「え」
「今度は罰じゃないから。いつも気持ちよくしてくれるから、よしよししてあげる」
言って、その小さな手のひらの中央で鈴口をくるくると刺激する。やべ。やばいって。色んな意味で!!!
「っ、おまっ」
よしよししてあげる、なんて。どんな顔でこの科白を言っているのかと思いきや、茹蛸のような真っ赤な顔で、唇を噛み締めながら必死に羞恥に耐えている。似合わねえのに、恥ずかしくて堪らないのに、しっかりプレイに乗ってくれている。
設定もガバガバだし、最初の取り決めも破綻しているし、舞台セットも衣装もパチモンなのに──なんで、こんなに興奮して没頭できるんだろうな。少なくとも、相手がナマエじゃなければここまではならないだろう。
「げ、元気でおっきくてえらいね」
思わず顔を手で覆う。言葉のチョイスそれで良いと思ってんのか? 最高。めちゃくちゃ元気になる。
よしよししてあげる、の言葉通りにナマエは竿を手で扱いてくれるが、遠慮がちな握力はもどかしいほどに弱っちい。
「もっと、ギュッてして」
そんな女の子みてぇなことを言っちまう。
「こ、こう?」
まだまだ弱い。もっと握りつぶすくらいの力強さで扱いてくれよ。
オレはナマエの手のひらに自分の手を重ねると、ぎゅうと握り込んで前後する。
「え、あ」
「っ、やべ……きもちい……」
ナマエのすべすべの手が、いろんな液が混ざってぬるぬるになったペニスを滑っていく。気持ちいい。この小さな指を折らないようにと気にすることはできたが、その動きを止めることはできず──気がつけば、ナマエの胸に白濁した精液を吐き出してた。
「敬一くんも、気持ちいいと声出るんだ」
「……出てた?」
「出てた。あっ♡ って言ってたよ」
……嘘だろ。
「えへへ、気持ちよくなってえらいね?」
いつものお返しと言わんばかりにペニスにキスをした。褒めるように優しく握って滑らせる。ちんちんよしよしがマジでちんちんよしよしされるとは思わねえだろ。
このときのナマエは、本当に年上っぽくて、オレの心に存在していなかった何かが芽吹きはじめた。これは咲かせていい種なのか? 開けちゃいけないドア開けちまったんじゃねえか?
ぽたっ、と水滴がひとつ、ナマエの手の甲ではじけた。真っ赤な鮮血だった。
「あ」
「げっ」
紛れもなくオレから出たものだ。指で鼻の下をなぞると、真新しく鮮やかな赤が指につき、錆びた鉄の匂いが香った。
──興奮して鼻血出すとか、それこそガキじゃねえか!
「だっ大丈夫?」
「わり、ティッシュ……」
ナマエが差し出した箱ティッシュから数枚引き抜いて鼻にあてる。上を向かずに血管を抑えて止血するのが正しいと知っていても、気まずさから上を向いてしまう。
「こ、興奮しちゃった?」
「……しちゃった、な」
居た堪れなくて鸚鵡返しのように答える。あー、聖人君子と王子様を返上したいって、こういうことじゃねえんだけど。
「あー、ちくしょう。こんなこと初めてだ」
「そうなの? 敬一くんが? 獅子神さんも?」
「〝獅子神さん〟も初めてだよ、好きな女の前で鼻血出すまで興奮するとはな」
えへへ、とナマエは笑った。恥ずかしそうな、嬉しそうな、はにかむ笑顔で。
「わたし、獅子神さんの初めてになれたんだ」
一瞬、心臓が胸からこぼれたかと思った。
ボトッと床に落ちる音さえ聞こえた気がする。思わず胸に手を当てるが、鍛え抜いた胸筋のどこにも穴は空いておらず、代わりにドッドッドッと倍速で高鳴る鼓動が手のひらに伝わってくる。トキメキ過ぎてもはや警報器のようだ。
ナマエが優しくオレを抱きしめる。柔らかい胸が、腹が、腕が、オレに押し当てられる。ペニスがオレの硬い腹とナマエの柔らかい鳩尾に挟まれて、どくどくと興奮を募らせていく。
「わ、わたし、本当に何もかも獅子神さんが初めてで……だから、何か一個でも、獅子神さんの初めてになってたのが嬉しいなって」
本気で感動しているように、両手で口許を覆って「わー」なんて呟いている。
なんつうこと言ってくれんだよ。
鼻血が止まる気がしない。
「し──敬一くん、座って?」
ナマエは腰をずらしてスペースを空けて、ベッドに腰掛けるように勧めてくる。素直に腰を下ろすと、ナマエはオレの頭を引き寄せて膝枕をする。
「敬一くん、がんばったねえ。えらいねえ。ちょっと休もうね」
「後輩っつうか、幼児プレイだろコレ」
ようやく言葉を発せるようになったオレが言ったのは、純粋なツッコミだった。
「えっ、そうですか!?」
先輩らしくなかったかな、と小さく呟く。
ほどよく肉と脂肪のついた柔らかいふとももがとても気持ちがいい。丈の短い制服からチラ見えする下乳がなんとも絶景だ。母に求めるのが母性なら、年上の先輩に求めるのはなんだ? この気持ちを単なる性欲や情欲と言い表したくない。こいつに向ける気持ちは、なんだかもっと綺麗なものであって欲しいという、オレの願いだ。
「鼻血止まるまでオレのこと褒めてくんね?」
「は? え──えっと、獅子神さんはかっこよくて──」
「敬一くん」
「……け、敬一くんはかっこよくて、優しくて、わたしの自慢の、か、彼氏だよ。お料理も上手で、わたし、敬一くんのごはんいつも食べすぎちゃうの」
「他には?」
「あ、あとね、わたしが手を繋ぎたいなーって思ったときに繋いでくれたり、こうしたいなーあれしたいなーっていうのに気づいてくれるすごい人なの」
「もっと」
「忙しいのにトレーニングを欠かさないところもかっこいいよ。続けるのって本当に大変だよね。当たり前みたいに続けてるのが敬一くんのすごいところだよ」
「もっとくれ」
「も、もっと? …………え、えええっちのときは少し意地悪だけど、優しくてかっこいいのは変わらなくて」
ナマエの視線がオレの下半身に向く。そう、オレいま下半身裸でみっともねー格好なんだよな。しかも、ナマエが言葉に詰まるくらいぎんぎんに勃ち上がってる。
「け、敬一くんに抱いてもらえると、しあわせ、なの」
あーーーー。もうだめだ。限界。無理。幸せにしたい。手はじめに気絶するほど気持ちよくしてやりてえ。
オレは身体を起こして鼻からティッシュを引き抜いた。
そのままベッドに押し倒して深く口付けをする。いまにも暴発しそうなペニスを太腿に押し付ける。
止まらない鼻血が、ぽたっとナマエの唇に落ちる。
「あー、くそ。まだ止まりやがら──」
煩わしくて愚痴るオレの頬を、ナマエが引き寄せた。そしてべろっと鼻血ごと人中を舐めた。気恥ずかしそうに微笑むナマエの唇が、オレの血で赤く染まっている。
「ば、場所変わろ?」
「──」
オレは放心したまま、言われるがままベッドに仰向けになった。
「わた、わたしが、上に、なる、から……」
ナマエの言葉は尻すぼみに小さくなっていく。最後に、聞き取れなないほどのか細い声で「敬一くんは、気持ちよくされてね」と言った。
オレ、前世で世界でも救ったんだろうか?
初めてのイメプ。初めての潮吹き。初めてのフェラチオ。初めての騎乗位。こんなに盛りだくさんにしてもらえるなんて、オレはそんなにいい子だったか? サンタのやつ、ガキの頃に贈り忘れたプレゼントを、きょうこのときにまとめて再配達したんじゃないだろうな?
ナマエが自ら股広げてオレの上に乗っかるなんて、二時間前のオレに言っても信じないだろう。
新しいティッシュを引き出してオレの鼻にあてがう。「無理しないでね」なんて、言う対象が間違っている。これから無理をするのはどう考えてもナマエの方だ。
位置を確認しながら遠慮がちに腰を下ろすが、当然そんなヌルいやり方で入りはしない。ふやふやの割れ目を亀頭に擦り付けて、焦った様子で喘いでいるのは眼福ものだが。
「手伝いましょうか?」
「っ、だい、じょぶだからっ」
意地悪な後輩として申し出るも、返ってきたのは全く大丈夫ではなさそうな声。慣れない体位で身体に力が入りまくっている。
「じゃあ、最初だけ」
腰を持って腹部を突き上げた。どぷんと先端が中に入る。
「ひぎ……ゅ…っ!?♡♡♡♡」
不意をついたせいか、目を丸くして口をはくはくと動かしている。
「ほら、がんばれセンパイ」
「んぅ」
中途半端な体勢で太股が震えている。ゆっくりと腰を下ろそうとしているが、身構え過ぎていて締め付けがきつい。先端をきゅうきゅうと締め付けるのが気持ちいいくらいだ。
「まだ全然だぞー」
「っ、し、がみさんの……おっきいからぁ……っ♡」
悪くない。めちゃくちゃ良い。
「獅子神さん?」
「けーいち、く、あ、だめ、むりっ、おなか、も、いっぱ……っ」
「センパイ」
きゅう。
「ナマエさん」
きゅうきゅう。
「ナマエちゃん?」
「っ……」
びくびくびく。
ふっ、ふっ、と小刻みな呼吸で返事はないが、オレの声に答えて膣内が締まる。ちゃん付けで軽くイキやがった。
「動こうか?」
「待っ……♡ も、少しだからっ♡♡」
いや、オレが最初に突っ込んだときから全然飲み込めていない。ヴァギナの入口でただ亀頭をきゅうきゅうと気持ちよく締め付けてるだけで、入れた気になってる。
「本当か? 見せてくれよ」
ナマエは右手をオレの腹筋に置いてバランスを取ると、左手でスカートの裾を摘み上げた。えろい。ナマエが騎乗位で。自分から挿れようとして。結合部をオレに見せつけている。
「あー、もう無理だ」
結局音を上げるのはいつもオレのほうだ。そうだろ? このまま〝待て〟ができるような賢い犬じゃねえ。
ナマエの子宮を目指して腰を大きく突きあげる。お゙、と嗚咽と喘ぎの間のような低い声をあげてナマエが絶頂する。ビクビクと収縮する膣内と身体の痙攣に、驚いたように目を白黒させている。
「あ゙、ま゙って、むり゙っ♡♡♡♡」
残念ながら止まってやれない。ナマエは牛に振り回されるカウガールのように身体を突き上げられ、揺さぶられ、喘いでいる。
深く腹部を貫くペニスは子宮口に達して、さらにその奥へ捻じ入れんばかりにノックする。身体がぶつかる度にクリトリスが潰れるのがさぞ気持ちいいのか、ひゃんひゃん喘いでいる。
両手を恋人繋ぎで支えて更に動きを強めた。このときばかりはいつものトレーニングに感謝した。おかげでナマエの肉体を際限なく絶頂させ続けられる。
この手で繋ぎ止めたのは、ナマエが振り落とされないためでもあるし、勢いでペニスが抜けないようにするためでもあるし、ナマエを逃がさないためでもある。
イッてもイッても自重で杭打たれる快感に、ナマエの表情はとろっとろに蕩けていた。いまならいくらでも好きなことを言わせられそうだ。
「あんたをスケベにしたのは誰だ?」
「し、ししがみさっ、あっ♡」
「えっちが気持ちいいって、誰に教えてもらったんだっけ?」
「ししがみしゃんでしゅっ♡ きもちいいのったくさんっおしえてくれまひたぁ」
「だろ? オレが育ててやったんだ。この乳首もな」
「ひ、んっ♡♡ やっ、やらっ」
ぶるんと揺れ続ける乳房を掴むと、ナマエは手を重ねた。やめてほしいというよりも、もっと触ってとでも言うように。
乳房を揉みながら親指で乳頭をぐりぐりと潰す。
「やだじゃねえだろ?」
「う♡ あ♡ あ♡ ぁあ゙〰︎〰︎〰︎〰︎きもちい、すきっ♡ これしゅきっ♡♡♡」
「いっぱい、気持ちよくッなれてえらいな」
「んぅ♡」
「かわいくてえろくて……ッ、本当に最高だよ……!」
流石に息切れしながらも褒め返すと、へらっとゆるゆるの顔で微笑んだ。きゅうううっと締まる膣に搾り取られるようにオレは射精した。
─2─
ナマエはしばらくベッドから動けないほど疲弊して、はあはあと息をあげていた。コンセプトに沿うためか、保健室のベッドはラブホにしては小さめだ。ナマエがゆっくり休めるように、オレは立ったまま水分補給をする。鼻血もすっかり止まっていた。
「なん、で、そんな、平気なんですか……」
「筋トレの成果」
顔を枕に横たえたまま、ピンピンしているオレを信じられないものを見る目で見つめている。
「わたしにやらせてって言ったのに……」
「悪かったって。我慢できなかったんだよ。しゅきしゅき言ってくれて嬉しかったぜ?」
ナマエは照れて顔を逆側に向けてしまった。
「いじわるな獅子神さんは嫌いです……」
「許してくれよ。もうしねえって」
オレは懇願しながらベッドに乗って背中側から抱きしめる。嫌いとかいいつつ、身体を動かしてオレが横になるスペースをつくってくれるのが優しい。
「な、舐めるのもっ、やだっていったのに……」
そうは言いつつも本気では嫌がってなかっただろ──とは言わず。「気持ちよかったろ?」と聞くに留めた。
「おもちゃもっ、使うとか言ってなかったっ」
「それは本当にごめん」
「お、おしっこ漏らして恥ずかしくてっ──きら、嫌われたらどうしようって不安になっちゃったじゃないですか」
あ。あのハイテンションなバイブ埋めバンバンは、潮吹きを単なるおもらしだと思ってテンパってたのか。かわいすぎんだろ。もう少し本当のことは黙っていよう。
「あんたがどんだけオレを嫌っても、オレがあんたを嫌いになることはねーよ」
「ふん」
わざとらしく鼻を鳴らす。わたしは拗ねています、という意思表示だ。微笑ましくてつい口がニヤけてしまう。
以前のこいつなら、「嫌い」はもちろん「やだ」も「やめて」も言えなかっただろう。否定的なことを口にしてもオレは受け止めてくれる──そう思ってくれることが、何より嬉しい。だからついつい意地悪をしすぎてしまうのが、オレの救いようのないところだ。
「お詫びに、あんたの言うことなんでも聞く」
「『なんでもとか言うんじゃねえ』じゃなかったんですか?」
「オレはいいんだよ。あんたになら何をされてもいいんだから」
「仕返しされますよ?」
「してくれよ」
全く動じないオレにやきもきしているのか、ナマエは身体を翻してオレの方を向いた。
ちゅ、とオレの乳首に優しいキスをする。
「し、獅子神さんのこと、いじめちゃいますよ?」
「いじめてくれんの? どんな風に?」
もう何を言っても無駄だと思ったらしい。ナマエはぐちゃぐちゃになったシーツを引き上げて、包まるように顔と身体を隠してしまった。こいつはお手上げになると、こうしてミノムシになる習性がある。
「敬一さんの、ばか」
ミノムシが発した小さな声を聞いて、今度は目玉が落ちたかと思うくらいに目を見開いた。
鼻血の出し過ぎによる貧血か? 一瞬視界が真っ暗になったような気さえした。信じられない気持ちで、半笑いになりながら「なんて?」と面白みのない言葉で聞き返してしまう。
獅子神さんでもなく。
敬一くんでもなく。
ただ名前を呼ばれただけで、どうしてこんなにも沁みるのか。たった一滴でオレの無限の枯井戸を潤してくれるのか。
オレは何度も「もっかい。な? もっかい」と、だんまりを決め込む白ミノムシに懇願し続けた。